飲食店経営に重要な食材の入れの中でも、特に難易度が高い上に選択肢が豊富で課題を抱える店舗様が多いのが、鮮魚の仕入れ。
豊富な種類の鮮魚を現地で確認し、その場で購入できる地元の卸売市場、鮮魚市場は有力な選択肢の一つとして挙げられると思います。実際、市場での仕入れには魅力的なポイントも複数ありますが、注意すべきポイントもいくつかあります。
この記事では魚を扱って40年、片山水産の代表が飲食店様が鮮魚を卸売市場で購入する際のコツや注意点についての情報を解説します。
鮮魚の仕入れで課題を抱えている方、卸売市場での仕入れに興味のある方はぜひご覧ください。
Contents
卸売市場とは?地域の生産と消費を支える重要拠点
卸売市場(海産物の卸売市場は「卸売鮮魚市場」といった呼び方もします)は2つの大きな役割を持ちます。
一つは地元の漁業者が水揚げした海産物を仕入れ、地元だけでなく全国に流通させる役割。地元の卸売市場の中で取引された商品が別の地方の卸売市場へと発送されていきます。
もう一つが、全国の卸売市場から仕入れた海産物を地元の飲食店や小売店に流通させる機能。全国の別の卸売市場を経由して入荷してきた商品を市場内で仲卸業者が買い受け、小分けし、市場内の自社店舗で販売したり、各取引先に配送したりといった形で地域の中で流通させる役割を持ちます。
地元の漁師が水揚げした海産物を仕入れる機能を「地元市場」とも呼びます。一方で、他の地元市場から仕入れた商品を地域に流通させる機能を「消費者市場」とも呼びます。この2つの役割を全国の卸売市場が相互に機能させることにより、国内での鮮魚の大型の流通が成り立っているのです。
卸売市場の中で機能しているプレーヤーたち
卸売市場の中で特に重要な役割を果たしているのが「卸売業者」と「仲卸業者」の2つです。ここに市場の中で買付を行う飲食店・小売店などのプレーヤーが参入することで、市場は機能しています。それぞれの役割を見ていきましょう。
卸売業者
卸売業者は市場の中で大元の仕入れを担う業者です。地元の漁師・漁協から水揚げされた海産物を仕入れるとともに、他の卸売市場からも海産物を仕入れ、仲卸業者に対して販売を行います。
オークションのような形式で行われる「競り」の形式をはじめ複数の取引形態での販売が行われています。
仲卸業者
仲卸業者は市場の中で卸売業者が販売する商品を仕入れ、小分けし、再度販売する役割を持ちます。競りなどの方法で仕入れた商品を市場内の自社の店舗に並べたり、個別に配送したりといった形で、飲食店・小売店に対して販売を行います。
また、地元の卸売業者から仕入れた地元の海産物を買い受け、地方の卸売業者に販売するといった、市場同士の橋渡しのような役割を担っているのも仲卸業者です。
飲食店・小売店
卸売市場の中には仲卸業者が展開する自社店舗があります。商品が小分けされ、並んでいる様子は一見「町の魚屋さん」といった雰囲気です。
しかし、実際にはこの市場内の店舗は業者専用で、原則として一般入場はできません。市場内の仲卸業者の店舗での仕入れが行えるのは立ち入りが許可された飲食店・小売店だけなのです。
つまり、飲食店の方が中央卸売市場で仕入れを行うにあたっては、市場に立ち入り可能な業者として許可を得る必要があります。
飲食店が卸売市場で魚を仕入れるメリット
卸売市場での魚の仕入れには様々なメリットがあります。代表的なものを見ていきましょう。
選択肢が豊富である
卸売市場の中には数多くの仲卸業者が自社店舗を展開しています。地元での仕入れに強い業者、特定の遠隔地の仕入れに強い業者や、特定の商品の取り扱いに長けている業者など、それぞれの特色が出ている店舗もあります。
イメージとしては様々な店舗が並ぶ商店街のようですが、各店舗が海産物の販売に特化しており、しかも全国からの商品が入荷してくるため選択肢は膨大です。
仕入れる商品を直接見ることができる
実際に目で見て、欲しいと思った食材を仕入れることができます。この点は近隣の小売店で購入する場合でも同様ですが、選択肢が多いことと併せて、より大きなメリットになると言えるでしょう。通販で購入する場合や、業者に店舗まで配送を依頼する場合、どんな状態の商品であるか届いてみないとわかりません。
膨大な選択肢の中から店舗でどんな限定メニューとして展開するかを考えながら、良いと思った食材の買い付けができるのも卸売市場ならではの魅力です。
小売店で仕入れるよりも安い
近隣の魚屋、業務用スーパーといった小売店で仕入れるよりも、卸売市場で仕入れた方が安価で仕入れられる可能性が高いです。
小売店も多くのケースでは同様に卸売市場から仕入れた商品を店頭に並べています。そこには当然仕入れのコストや店の利益を乗せなければならないため、価格が高くなります。中央卸売市場で直接購入すれば、小売店を挟まない分、仕入れコストを抑えることが可能です。
飲食店が卸売市場で魚を仕入れるデメリットや注意点
一方で、卸売市場での仕入れにおけるデメリットや注意点もあります。重要なものを3つ解説します。
良い品を見極めるのは経験が必要
膨大な選択肢は、良い商品を選べる場合は大きなメリットになりますが、時には選択肢の多さがかえってストレスになる場合もあります。
卸売市場の店舗に並んでいる商品の中には、残念ながらあまり質の良くないものや、商品の価格が適正とは言い難いものも混じっています。そういった商品を避け、質が良く適正な価格の商品を仕入れるには、料理の腕とはまた異なった能力を求められるのです。
卸売市場に並んでいる時点で価格は高くなっている
近隣の小売店よりは安く仕入れることのできる卸売市場ですが、卸売市場の仲卸業者店舗に並んでいる時点ですでに価格はある程度上がってしまっています。
地元の漁師や漁協→地元市場の卸売業者→地元市場の仲卸業者→消費者市場の卸売業者→消費者市場の仲卸業者
これだけ多くの業者が仲介しているため、必然的に価格は卸売市場に並んでいる時点ですでに一定の水準で高騰してしまっているのです。
鮮度が最高の状態ではないことも多い
多くの業者を介していることにより、価格が上がってしまうだけでなく、鮮度の面でも不利になることが多いです。
業者間での取引、とりわけ、長距離の輸送を伴う取引は常に最良の状態で行われているとは限りません。時間が経過するとともに、生鮮食品である海産物の鮮度は下がっていってしまうのです。
もちろん、地元で水揚げされた最高の鮮度のものや、遠隔地から輸送されてきた商品でもラグなく流通し、鮮度の良いものもあります。しかし、そうではなく時間が経過し、品質が落ち始めているものも同様に卸売市場に並んでいるのも事実です。
市場に並んでいるからといって、必ずしも鮮度が良いわけではない点は押さえておきましょう。
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まとめ
卸売市場での仕入れについて解説しました。
- 卸売市場には「地元市場」の機能と「消費者市場」の機能がある
- 卸売市場では卸売業者と仲卸業者が取引を行っている
- 飲食店は仲卸業者が展開する市場内の店舗での仕入れが可能
- 店舗で仕入れられる魚に選択肢は膨大
- 一方で、価格や鮮度面では産地直送には劣る
卸売市場は魚の流通によって人々の暮らしを支える重要な機能。飲食店目線でも目利きに自信があれば優良な食材の宝庫でもあります。一方で、価格面や鮮度面を考えると、産地直送の方がメリットが大きいのも事実です。
ぜひ、様々な要素を考慮しながら、卸売市場での仕入れを行ってみてください。
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