数ある飲食店の業態の中でも、レストランは提供する料理やお酒の質にこだわり、お客様に高い付加価値を提供しながら比較的高単価の対価を頂く業態。料理やお酒の仕入れに自身のある方は特にやりがいのある業態かと思います。
一方で、高単価、高付加価値の業態であるからこそ質にも妥協が許されず、仕入れの難しさにも直面しかねません。レストラン経営においてはその点の戦略が必須であると言えるでしょう。
この記事では魚を扱って40年、鮮魚の販売業者として様々な飲食店様とお取引してきた片山水産の代表が、高単価のレストランの経営者の方向けに「魚の仕入れ」のコツを解説します。
提供メニューの質改善による顧客満足向上、利益率改善にも直結しますのでぜひご覧ください。
Contents
レストラン業態のメリット
レストラン業態では良質な空間の中で良質なお料理やお酒を提供し、顧客は時間をかけてそれらを楽しみます。そのため、客単価は他業態の飲食店と比較して高い傾向にあります。
他業態の飲食店と比較したレストラン業態の経営上のメリット、デメリットを解説します。
客単価が高い
レストランでは顧客一人あたりの平均客単価が高く、少ない来店者数でも高い売り上げを狙うことができます。
レストランの場合、一人で食事をされるよりも、デートや会食、家族での利用などが多いため、1グループあたり複数のお客様の来店が期待できるのもポイントと言えるでしょう。
ドリンクメニューにより高利益が狙いやすい
メニュー設定、価格設定にもよりますが、一般的にはフードメニューよりもドリンクメニューの方が利益率が良く、利益を残しやすいです。
レストランでは一人一人の顧客が長時間滞在し、ゆっくりと食事を楽しむため、ドリンクメニューを複数回提供でき、利益を狙いやすいポイントと言えるでしょう。
例えば、コース料理にあわせたお酒のペアリングなどは、顧客満足度を大きく上げながら、売上、利益を狙えるためおすすめです。
仕入れを固定化しやすい
レストランは他業態に比べてコースメニューでの提供を行うケースも多いでしょう。コースメニューの場合、アラカルトでの提供と比較して仕入れの量や種類を絞ることができます。
そのため、例えば品数が多い大衆居酒屋などと比べて食材の仕入れを安定させやすいのです。
店主のこだわりを反映しやすい
経営においては利益を出すことが大前提ではありますが、せっかく開業して自分の店を持つのであれば、自分のこだわりや価値観、世界観は店舗のなかで存分に発揮したいですよね?
レストランの場合、いかに付加価値をつけるか、という勝負になるため、その部分に店主のこだわりを反映しやすいのもポイントです。
店主のこだわりが強くなれば、そのこだわりに「合う、合わない」でリピート率が変わってくるため、相性の良いリピーターの選別・獲得につながりやすいのもメリットと言えるでしょう。
レストラン業態のデメリット
レストラン業態にはメリットも大きいですが、一方で高単価・高付加価値らなではの難しさがある点も忘れてはいけません。
メニューの原価が高い
レストランで提供される食事は高価格帯に設定しやすいですが、高価格帯で満足してもらうためには食材の質にもこだわる必要があります。
そのため、他業種と比較してメニューの原価はどうしてもかかりがちになってしまう点は念頭に置いておきましょう。
運営コスト全体が高い傾向にある
食材の原価もですが、レストランは運営コスト全般が高い傾向にあります。例えば、殺風景な空間で料理だけ上質であればよい、というわけではなく内装やお皿などにも一定のお金をかける必要があります。
スタッフを雇用する場合も、他業態と比較しマナー、スキルが求められるため人件費も比較的かかる傾向にあるでしょう。
「隠れ家」を唄う場合は戦略次第ですが、好立地での出店を狙うのであれば賃料も多くかかります。
仕入れ値だけでなくこのような運営コスト全体が高くなりがちな点は念頭に置きましょう。
顧客の要求が高い
レストランには安くないお金を払う以上、顧客の要求も高いです。特に、レストランでの食事は特別な機会、大切な機会である場合も多いので、どれに見合った顧客体験、満足度を提供するハードルの高さがあります。
安い店舗であれば我慢・妥協できるようなことであっても、高単価のお店では求められてくるのです。満足度が低ければリピートに繋がらないだけでなく、クレームにつながる可能性もあるため、顧客の期待値が高いことを前提にサービスを提供する必要があります。
回転率が悪い
見落としがちなポイントですが、ゆっくりと食事を楽しむということは店舗の回転率が悪いことを意味します。
例えば、居酒屋の場合、17時くらいからオープンしていると「0時会」ののような需要からディナータイムの食事利用需要、ピーク後の2時会利用に、深夜の〆での利用など4回転を狙うことも可能です。
一方で、レストランの場合、例えば平均2~3時間滞在と考えると、ディナー営業で回転率は多くて2回転でしょう。
一人のお客様あたりに対するコストが高いにも関わらず、回転率も悪いため、じつは食材の原価にかけられる額は思ったよりも少ないのが現実です。
そのような前提のもとに、高付加価値を創り出し、提供することが重要といえるでしょう。
仕入れ値を抑えて高品質を狙う!レストランの魚仕入れのポイント
レストランでは質の高い料理を提供することが前提ですが、これまで説明した通りそのために原価をいくらでもかけてよいわけではありません。
むしろ、求められる水準が他業態より高いことと比較して、仕入れにかけられるお金はむしろ限られているとすらいえます。
仕入れ値を抑えつつ、しっかりと高品質なメニュー提供をするためのポイントについて解説します。
鮮度の良い食材を仕入れる
鮮魚の質の半分以上は鮮度で決まると言っても過言ではありません。レストランの場合、生食での提供はカルパッチョなどくらいで、基本は加熱調理が多いかもしれません。その場合でも、やはり舌の肥えたお客様相手には新鮮な素材を使うことが求められます。
食材の鮮度が良ければ、仕入れる食材は最上級ブランドのもとなどでなくとも十分な質が担保できる可能性が高いです。
旬の食材を仕入れる
旬の食材を仕入れることは品質面でも価格面でもメリットがあります。
旬のものはやはり同じ素材であっても味が良い可能性が高く、しかも旬のものは市場に大量に出回るため、仕入れ値も抑えられる傾向にあります。
旬の限定メニューはレストランの付加価値にもなりえるでしょう。
旬の食材を使うメリットは多いため、食材の旬については常にアンテナを貼っておくのが良いでしょう。
良質な個体を仕入れる
ひとえに同じ種類の魚でも、大型の高級魚の場合、個体によっても味が違います。基本的には魚はキロ単価で取引されることが多いため、仕入れ値はかわらないのに質が大きく違うとすれば、良い個体を選ばない理由はありません。
提供メニューに大型の高級魚を使う場合、単に種類を選ぶだけでなく「個体を選ぶ」意識を持ってみてください。
廃棄コストを含めたコストコントロール
仕入れ値をコントロールすることも重要ですが、見落としがちなのが廃棄コスト。食材のロスが出てしまった場合、仕入れ値が無駄になるだけでなく廃棄にまでお金がかかり、手間も考えると二重三重に損をしています。
在庫の調整や適切な環境での保管にまで気を配り、極力廃棄を出さないよう在庫をコントロールしましょう。