飲食店の経営において食材の仕入れは店の品質と顧客満足度を左右する重要な要素です。特に、肉や魚などの生鮮食品は料理の目玉となりがちであるため中でも力を入れて仕入れたいですね。
しかし、生鮮食品は単価がかかりがちな一方で消費期限が短く扱いが難しいため、お悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか?
この記事では、鮮魚を扱って40年、生鮮食品の中でも需要の高い鮮魚を扱い続けている片山水産の代表が生鮮食品の仕入れのコツやポイントについて解説します。
生鮮食品の扱い方や、冷凍の商品との使い分けについても解説しているのでぜひご覧ください。
Contents
まず抑えたい、生鮮食品の仕入れポイント5つ
飲食店で生鮮食品を仕入れるにあたって気を付けたいポイントについて5つに分けて解説します。
仕入れ先を吟味する
まず、重要となってくるのがどこから仕入れるかです。仕入れ先を選ぶ際には、価格だけでなく、提供される食材の品質に注目しましょう。
新鮮で品質の高い食材を提供する仕入れ先を選ぶことが、お店の料理の品質を保証する基本です。
また、可能であるならばできるだけ地産地消を目指すのも良い戦略でしょう。地元の農家や漁師、近い業者と直接取引を行うことで、新鮮で地域特有の食材を仕入れることができます。
また、最近では産地直送での仕入れも容易になっています。遠隔地から優良な生鮮食品を仕入れたい場合、配送から届くまでの時間なども考慮しながら仕入れ先を選ぶのが重要です。
良いタイミング食材を仕入れる
日本には豊かな四季があり、それに合わせた旬といったものがあります。特に、海産物はお肉などの生鮮食品と比べて季節的な要素が大きい傾向にあると言えるでしょう。
季節ごとに旬の食材を仕入れることで、より料理の品質を高めることができます。しかも、旬の食材は価格が安定していることが多いため、仕入れ値を抑えることにもつながるでしょう。
また、通年で手に入る食材についても市場価格の変動に敏感であることも重要です。季節的な要素に加え、漁獲量や市場全体の需要と供給のバランスによっても同じ商品でも価格が大きく異なるため、価格には常に敏感である必要があります。
適正な在庫管理
生鮮食品は傷みやすいため、過剰な在庫は廃棄ロスにつながります。廃棄ロスは仕入れ値が無駄になるだけでなく、廃棄にもコストがかかってしまうため、手間の人件費も加えて何重にも経営に悪影響を与えます。その上、大量の食品ロスはSDGsの観点からも好ましくありません。
必要最低限の在庫を把握し、頻繁に仕入れを行うことが望ましいです。ただし、仕入れの量が少なすぎると商品の提供ができなくなり機会損失が生じます。
可能な限り使い切れるくらいの量で仕入れ、少し余ったものを賄いとして消費できる程度に調整できるのが理想と言えるでしょう。
また、在庫管理には、先に仕入れた食材から使う「先入れ先出し」の原則を守ることが重要です。これにより、食材の鮮度を保ち、無駄を減らすことができます。
適正なコスト管理
生鮮食品は他の食品と比べても単価が高くなりがちです。しかし、良質な生鮮食品を適正な範囲で安く仕入れることも経営の成功には欠かせません。
仕入れコストを抑えるためには仕入れ先との良好な関係を築き、交渉の機会を設けることが有効です。また、定期的に大量に仕入れることが予定されている場合、ボリュームディスカウントや定期割引により価格の優遇を受けられる可能性があります。
なお、いかに安く有効な関係を築ける取引先を見つけられても一つの仕入れ先に依存すると、その仕入れ先が問題を抱えた時に大きな影響を受けます。リスク分散のためにも、複数の仕入れ先を持つことが重要です。
複数の業者と同時並行で取引をしつつ、常に新たな仕入れ先の選定も視野に入れておいて良いでしょう。
食材を活用できるメニュー開発
仕入れた食材は可能な限り複数のメニューで活用することをおすすめします。そうすることで無駄を減らし、コスト効率を上げることができるためです。
また、季節限定メニューや日替わりの特別メニューを設けることで、新鮮な食材の魅力を最大限に引き出しながら、限定感を持たせることで顧客の消費意欲を刺激することもできます。
冷凍の食材はあり?生鮮食品と比較したメリット・デメリット
消費期限の短い生鮮食品ではなく、長期保存可能な冷凍の食材を使うといった選択はありなのでしょうか?
結論としては、冷凍の食材は扱いやすくメリットもありますが、一方で生鮮食品の方が勝る点も少なくありません。
冷凍の食材のメリット・デメリットについて解説します。
冷凍食材のメリット
冷凍の食材を用いるのには保存の容易さや品質・価格の安定性といったメリットがあります。
長期保存が可能: 冷凍食品は長期間保存が可能であるため、仕入れの頻度を減らし、在庫管理が容易になります。これにより、廃棄ロスを大幅に減少させることができます。
一貫した品質: 冷凍技術の進歩により、冷凍食品は一貫した味と品質を提供できます。これは、料理の品質を安定させるのに役立ちます。
価格の安定性:長期保存が可能なため、生鮮食品と比較して市場の価格変動の影響を受けにくく、年間を通じて比較的安定した価格での仕入れが可能です。
冷凍の食材のデメリット
一方で冷凍の食材は品質面では生鮮食品に劣ることが否めず、また、商品によりますが健康への懸念も増します。
味と鮮度が劣る: 冷凍食品は生鮮食品に比べ、味や食感が劣りがちです。冷凍や解凍過程での成分の変化、水分損失や食感の変化が特に品質に影響を与えがちです。瞬間冷凍などの技術を使うと生鮮食品とほぼ遜色ない品質での冷凍が可能ですが、設備が高価であるため導入している仕入れ元は多くありません。
健康への懸念: 一部の冷凍食品には、保存のために添加物が使用されている場合があります。これらの添加物に対する健康への懸念が顧客によっては問題視されることがあります。
解凍しなければ使えない:使い勝手や価格など、総合的な利便性では高い評価を受けやすい冷凍の食材ですが、解凍しなければ使えない、という点では必ずしも利便性が高いわけではありません。意外と見落としがちな点なのでご注意ください。
冷凍の食材をどの程度利用すべきか、どこに利用すべきかは、飲食店の運営スタイルや目指す品質、顧客層によってその適用が異なります。メリットを最大限に活かしつつ、デメリットを最小限に抑えるためには、生鮮食品と冷凍食品のバランスを適切にとることが重要です。
こだわりたいポイント、看板料理などはなるべく生鮮食品を使い、質と価格・利便性のバランスを保ちたい部分は冷凍の食材を使う、といった使い分けも考えられるかもしれません。